「未明」に/tomoaki.t
 

「未明」に、誰もいない路上で、まだ雪にな
ることのない冷たい雨を浴びて、不十分な「
存在感」を薄く薄く展ばし、かつ儚いその「
光」を凪いだ海面のように留めながら、生き
死になどついぞ関係なく、ただ体表に当たる
雨を虹色に反射させて、私に「音律」を連想
させ続けている「何か」があった。
雨の降り始めは記憶になく、初速の小さなレ
コードの回転を、彼女と笑い合ったのが覚え
ている記憶で「最も古い」のだとする。「最
も古い」話を路上の「何か」は好んでおり、
「最も古い」話を知るために「未明」という
時間にそれはある。
相槌を打つのを忘れないよう、ピアノを弾く
間にたびたび手
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