僕の涙。/敬語
 
涙を流れないと知った僕はそれがまた悲しくて、哀しくて。
どうにかして、再び涙を流すことが出来ないものかと考えた。

すると、名案が。ただ待てばよいのだ。
僕の涙の核が、排水溝から下水道へ、下水道から下水処理場へ、下水処理場から川へ、川から海へ、海から蒸発して空へ、空から雨として地上へ、地上から川へ、川から浄水場へ、浄水場から僕の家の水道管へ、水道管から蛇口へ、そして蛇口から再び僕の身体へ戻ることを。

そう思うと、希望が持てた。
悲しみと哀しみが消えた。

嗚呼、本当に憐れなるは僕の悲観さ。
ただ目の前の出来事のみを考えて悲観的になってしまう、その心。

今頃はもう、海にた
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