春のまぼろし/黒木みーあ
 
まうわたしの、癖。わたしの、わたしたちの真昼を、言葉にはなれない言葉の光で、満たしていく、みたいに薄明るく眩しくてまだ、その陰りの反動が、どうしても怖いの、です。

   *

互いに、あたしはお尻を、猫はキュートな尻尾を、背中で見送り合って、別々の道を行く。すぐにまた陽が射してきた。それと同時に、肌寒い風が急に勢いをなくして、やさしく頬を寄せてくる。またひとつ空き家を通過する。古い、平屋建て。誰を迎え入れるわけでもなく、クレマチスが花を咲かせている。ここにも、春。旅人の喜び。という花言葉を思い出す。(( 声色の、高い、母の声がする。父のいない、まどろみの中。春の、陽だまりの中で、聞こえる
[次のページ]
戻る   Point(10)