春のまぼろし/黒木みーあ
いだね。そんな風にほんの、少しだけ、互いに半身を並べて、しばらくの間並行に、歩いていく。(( 意識、しないように、横目で。きっと猫もあたしを、意識、しているんだ。そのうちに、突き当たる。次の角。右か、左。一瞬、立ち止まった。猫も、あたしも。
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先天性の、ものでしょうと、ため息混じりでお医者さんが言うのです、から、から、今のわたしは、必ずしもわたしのせいでは、なくて、ねえお父さん、見てください。(( 聞こえているのなら。今日も、ああこんなにも陽は、あたた、かいのです。もう、春です。風の、匂いに溺れてしまいそうで、今年も、またからだの中を春が巡って、いくから、(( 震えて、しまう
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