春のまぼろし/黒木みーあ
ーすとりーと。無駄に広い、道幅。並ぶ家々には、剪定されていないままのレッドロビンが、四方八方に手を伸ばせる限りに伸ばしたと、言わんばかりで、(( 頭の、隅っこの方では、"垣根の定番!成長の早いレッドロビン!"と、いなくなった父が、勝手に補足を始めている。道なりに、角を曲がる。その右手やや前方、片手を高らかに空に向けているかのような、痩せ細った梅の木が一本、空き家の庭で、今にも死にそうに、生きているのが、見えた。
*
背中を、蹴られたことが、あるのです。誰とは言わず、誰にでも。そんな時、いつも、存在しない理由は、追撃のように背中を貫通して押し寄せてくるので、わ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)