夏が来ますよ/ホロウ・シカエルボク
った
そして夏が来たんだ
見飽きた芝居の前口上のような調子で
だけど
それはどちらかと言えば夏のせいではなくて
そして
夏子は
夢の中で
僕の手を取るようになった
手を取って
なにかを語りかけるのだが
声は
何も聞こえず
くちびるを読むこともかなわなかった
話しかけるべきことがあるのに
どうしてそんな粗末な真似をするのだろうと
僕は少しだけ腹が立った
少しだけ
気が触れたような太陽が
その年の最高気温を叩きだした夜
夏子は
僕の耳のあたりまで小さなくちびるを寄せて
ふたことだけ囁いた
「飾るか?飾られるか?」
僕は
背中に氷を入れら
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