ウイリーの風/剣屋
 
大学生だった。だから仕送りせずともアルバイトで食いつないでいけるだろうと考えて放っておいたよ。しかし……三ヵ月後地下鉄の電車に飛び込んで死んだ。あっけない空虚な死だ。そんな形で死ぬくらいなら私の手で殺しておけばよかったとさえ感じたよ。わかるかな。……私はキリコさんに娘を感じていたのだよ……答えはこれでいいかなキリコさん……いや娘の……娘の……娘の…………」
 キリコは掌で醜い男の唇を覆い隠した。
「もういいんです。もういいんです。もういいんです。充分にわかりました。充分に、充分に、充分に伝わってきました」
 世の中に、自分と似た顔を持つ人間がどれだけいるかをキリコは知らない。さらに言えば自分
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