ウイリーの風/剣屋
 
らついた眼ではなく、穏やかな眼になっていた。なにかしらの心情の変化があったとでもいうべき晴れやかな顔になっている。
「あっはっはっはっはっ。キリコさんの顔は美しいが、頭の方はとても悪いようだね。とんだ思い違いだよ。思い違いも甚だしい。それに私を気遣うなんて相当なまぬけだ……私を気遣うなんて本当にまぬけだ……本当に……本当に……心の美しい女性だ……」
 醜い男は空を振り仰ぎ、弱々しい光を放つ三日月を見つめた。すると晴れやかな顔から脱力したような顔つきになり、目尻から涙を流し始めた。
 キリコにはその涙が薄汚れたものには思えなかった。醜い男は涙を流すことで、自分の心の中にあった歪んだものを外に捨
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