ウイリーの風/剣屋
 
に捨てようとしているのかもしれない。脱力したような顔になっているのは罪を認めたせいかもしれない。そう感じさせるだけの美しい涙だった。
 だとすれば今ここにいる醜い男は、さきほど突如として襲ってきた強姦まがいの野獣ではなく、野獣の仮面を外した平凡な、どこにでもいる四十代の男に戻っているかもしれない。
 今ならこちらの知りたいことを聞き入れてくれるかもしれない。キリコには二つの疑問があった。
 襲われている時に一番激しく感じていたこと。
 ――どうしてアタシが? どうしてアタシが? どうしてアタシが?
 もう一つは醜い男が謎めいた不可解な言葉を口ずさんだこと。
 ――そうさ娘と同じ君にね。
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