ウイリーの風/剣屋
おうと決心した。それは悪いこと。許してはいけないこと。でも同時に思ったことがあるの。アタシは大したモデルじゃないと自分で思ってる。でも彼はそんな目立たないアタシのことを凄く知ってた。凄く知られているっていうことは素直に嬉しい。でもそれが悪い方向に働くことはしてほしくなかった。普通に話したりするだけならいつでもよかったのに。アタシはそう思うの」
一陣の風が吹いた。木々はざわめく。木下闇の中、枝の撓る音、葉擦れの音が四人の耳に向かって駆け巡る。夏の涼やかな風が傷ついた身体と心を癒していく。
その時、だらしなく横座りしていた醜い男が、不意に上体を起こした。二度三度と深呼吸をした。これまでのぎらつ
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