ウイリーの風/剣屋
 
持つ鍵によって外された。不自由を強制した鎖はもうないのだ。キリコは開放感に包まれ、不安がやっと身体から離れていくのを感じた。掌を握っては開き、握っては開いて自由をその手に掴み返していた。
 そして少しだけ平常心を取り戻すと、キリコは醜い男のことを考えた。彼の行動というのは紛れもなく悪質な、行過ぎた、偏執的な愛によるものだ。越えてはいけない一線を遠慮なくかいくぐる人だ。リミッターの外れた可哀相な人だ。制限のない欲望を自分勝手に振り回す愚かしい人だ。
 ストーカー行為や拉致を行う人間。それは新聞記事やニュースなどでよく耳にする。一般人も芸能人もスポーツ選手もみな均等にその恐ろしい機会に遭うかもしれ
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