ウイリーの風/剣屋
 
きてよ。ねえ、起きてよ」
 反応はない。
「どうしたの、起きれるでしょ。ねえ、起きてよ」
 反応はない。
「起きて!」
 ナナメのまぶたが幽かに、ぴくりとあるかなしかの動きをみせた。そしておもむろに眼が開く。
「…………ああ、キリコか」
「よかった。すぐに病院に連れて行くね。救急車を呼ぶわ」
「ばか。単車以外の乗り物に俺は乗らないぞ。単車以外の乗り物はクソだ。それにこんな怪我は慣れている。昔何度も海岸のガードレールに突っ込んだことあるしな。ははは」
「笑い事じゃないわよ。すぐに救急車を呼ぶわ。それまで待ってて」
 シャネルのバックから携帯電話を取り出した。キリコは救急車を呼んだ
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