ウイリーの風/剣屋
んだ。
一方、ゼロは砕け散った助手席の窓ガラスの穴に身体をねじ込み、車内に侵入していた。車内はハーレーが吐き出し続ける黒々とした煙で充満しており、濁っていた。オイルの臭気が全体に溢れていた。後部座席に病的な顔になっているキリコを発見し、ゼロはたじろいだ。
「おい。しっかりしろ。動けるか」
「うん。動けるよ。なにもされてないから」
キリコの銀色の手錠と指錠が目に入ったゼロは怒り心頭したのだろう、鬼の形相だ。明らかに殺気を込めた眼は血走り、鈍く輝いている。
「あの野郎、この俺が、ひき殺してやろうか」その声に偽りは感じられない。
助けに来てくれたゼロにキリコは感謝していた。しかし本
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