ウイリーの風/剣屋
し本当の殺意を抱いた人間を前にして、思わず眼をそむけた。横眼でゼロを見るとやはり気が立っている。すぐに銀色の手錠と指錠つけた両手でゼロの胸を何度も叩いて、揺する。
「だめよ。あとは警察に任せよう。ね、警察に任せようよ。もう充分だよ」
「いや俺があの野郎を殺す。俺は後ろで見てたんだ、ナナメさんが猫や犬みたいに地べたに這いつくばる瞬間を。俺があの野郎を殺す」
ゼロの頭の中は殺すという文字に支配されているかのようだ。キリコはそれを恐れた。醜い男は一人ではなかった。ここにもまた一歩間違えれば醜い男になりかねない男がいる。どうにかしてゼロの眼を覚まさねばならない。
キリコは、はっと思いついたよう
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