ウイリーの風/剣屋
 
るウイリーでジープ・チェロキーの助手席の窓ガラスに突っ込んだ。ナナメは激突する寸前を見極め、頭を抱えて身体をアスファルトに投げ出した。ラグビボールのように複雑な回転でのたうつ。全身の裂けた皮膚から血を流して白い夜霧の這う闇に倒れ込んだ。ナナメは化石のように動かなくなった。

 時を同じくして無人のハーレーは助手席のガラスを豪快に突き破った。前輪が醜い男の顔を引き裂こうとしたが、あと一歩届かず、そのまま控えめに赤々と燃え出した。
 穏やかに、しかし不気味に燃えるハーレーの前輪。それを見て心底驚いたであろう醜い男は運転席から慌てた様子で降りた。そして震えながら白眼を剥いてアスファルトに倒れ込んだ
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