夜に死なない/黒木みーあ
服を着ていた。おかしかった。電話が鳴る。半狂乱の店主から、半狂乱な声で、どうしたんだと。どうしたんだと、わたし。いやどうもしていない。わたし。誰にも会いたくなかった、もう、思いつく限りの罵声を浴びせて、電話を切った。
歩きながら、わたしは死んでいた。今までと同じように、ひとりずつ、わたしが死んでいった。
なかなか治まらない胸の動悸と頭痛で、死期が早まるように、どんどん、どんどん死んでいった。一体、後何人のわたしが残っているんだろう。急に走るものじゃない。昔誰かに言われたことがあった。親だったか、愛そうとした人か、遠い昔ほど、よく覚えていた。気付けば足も痛い。走れるような靴では
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