島野律子小感/葉leaf
。だから世界との深刻な違和をきたさない。そして、齟齬感や不満足が伴うとしても、それらの暗い影はむしろ幸福の陰影として幸福の輪郭を際立たせる。島野の疑問はあくまで幸福な疑問なのである。
9.特性の拡散
遊戯の快楽、官能的な蛇行、透明な物質、穏やかな敵意、外界と内界の融和、毛細血管の流れ、物質との距離としての詩、幸福な疑問。このような側面から島野の作品を語ってきた。私は、これらの特性の間に、無理に内在的な連関を見出そうとは思わない。あるいは、これらの特性を根源で支えている唯一の真実のようなものを無理に見出そうとは思わない。そうではなく、様々な特性がそれぞれの方向に拡散しているという現
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