島野律子小感/葉leaf
 
伴っていない。
 疑問には齟齬感、不条理感が伴うこともあれば(「なぜ」という疑問の場合)、好奇心や知的な楽しみの予感が伴うこともある。いずれにせよ、知ろうとしても答えが得られないという不満足が伴う。
 島野の疑問は不意に気づかれるものであり、またその答えは追求されないので満足させられることがない。これは存在の根源を問うような大げさな疑問ではなく、むしろ、内界と外界とが幸福に融和する液状の空間において、内界と外界との微妙な均衡の不意の破れから生ずるさざ波のようなものである。そして、このさざ波は限りなく遠くまで延々と渡っていく。
 島野の疑問は力学の結果であって、力学の根源を問うものではない。だ
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