島野律子小感/葉leaf
に主観性を流し込む。
8.幸福な疑問
冒頭に掲げた「十年の花」を読み返してほしい。島野の詩には強い情緒はほとんど現れない。島野の感情は、平常心を中心にわずかに振動するにすぎない。そして島野の平常心は、どちらかというと幸福の方に傾いている。あるいは、平常心を保てるということがわずかな幸福を生み出している。人間の平常心というものは概して幸福なものである。
q9 なぜ、苦しそうな顔をしないのだろう。(「草の匂い」より)
平常心からわずかにずれる感情として島野の詩に比較的多く現れるのは、疑問に伴う感情である。そして、島野の疑問はたいてい脈絡もなく提示され、基本的に答えが伴っ
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