島野律子小感/葉leaf
り物質を無限遠へと遠ざける楽しみである。
q8 日の射す方向を平気で東だと思う体で、それから北は? 正面。(「美麗島」より)
そしてここにもう一方の極がある。島野はここで思惟を物質に帰属させている。つまり、精神を物質化して作者が物質そのものとなり物質との距離を無化する生命的認識である。
島野にとって詩とは物質との距離であり、島野の生活、さらに生命の営みは、その距離の多様性に反映されている。島野と物質の間にはそれぞれの距離があるわけだが、この距離を満たしているのが彼女の文学的創造力である。この文学的創造力が、物質を触知し(あるいは無視し)、物質との距離を調整し、場合によっては物質に主
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)