酩想における散文詩 / ****'01/小野 一縷
 
は子供のように夢中になって ささくれた親指の皮を剥ぎ続けた
滲む赤に 
舐めたこともない鉄の味 この海で赤錆びた 花 
高鳴って この血潮 薔薇の錯乱 花びらの 噴出する 胸の奥の海溝。 


海底の銀の水仙が金の喇叭で赤い音符を吹いたコンパスが描いた譜面のとおり
今 白鯨が吹き上げた 朝陽に輝く潮に乗って 見下ろした
ユニコーンの足元に光る青い鉱石のシャンピニオン
旅人の集うオアシスに湧く水銀
朝陽を見続けて両目を焼かれた賢人の涙の色。


冷たい景色
この冷え切って
壊疽を起こした下半身は青い斑点付きの乳白色 もう引きずるしかない
まだ ぼくは両足を失いたくない
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