密度に欠けるプール/ホロウ・シカエルボク
 

だけどあいにくぼくは厭世的な詩人ではなく
だからぼくはその太陽のタイミングについてはそれほど考えなかった
横断歩道を横断し終わると
ふりかえってさっきまで自分が立っていたあたりを見た
シグナルがまたゆっくりと変わって
打算的な競争馬みたいに足を止める様々な人たちがあつまり
見た、そのなかに
さっきまでそこにいたぼくのすがたを
「おぉい、おぉい」さっきまでそこにいたぼくは楽しそうに手をぶんぶんふりながら、いまここにいるぼくに呼びかけていた
ぼくはなんとも考えようがなくて
さっきまでそこにいたぼくのことをしずかに眺めていた
おぉい、おぉい、とおお声を
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