密度に欠けるプール/ホロウ・シカエルボク
声を出しながら
さっきまでそこにいたぼくはこちらに向かって駆けだしてきて
突っ込んできた四トンのダンプにはね飛ばされた
いまここにいるぼくはさけび声を上げた
それはぼくにしか見えていなかった
おぉい、おぉいとすぐちかくで声が聞こえた
ぼくは足もとを見た
さっきそこで四トンダンプにはね飛ばされたぼくが
ツイストドーナツみたいなかたちになってぼくを見上げていた
ぼくはさけび声をあげた
それはぼくにしか見えていなかった
ぼくはふらふらとそこをはなれた
雨はいつの間にか上がっていた
密度に欠けるプールのなかを歩いているみたいだ
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