冬と冬/木立 悟
 




墨の枝が地にとどく
雪は雪に震えつづく
ひとつ押され
黒く点る


道が夜を決め
灯が季をくくる
心は薄く
水は水に


海のむこうの霧
羊のなかの髪と風
声と煙
青空を分ける


けして光でなく
空を岩を巡るもの
土に触れる指の先から
夜を白く燃やすもの


甲を甲に響かせて
冬と冬は駆けてゆく
草を喰むもの 集う水辺
永くゆるりと 切り取られる土


白が白に押し寄せる
赤が赤に渦を描く
黒は黒にさらに渦巻き
色を色に塗り込める


双つの閉じた眼
ふくよかなつらなり
次の季まで
波打つ眠り


[次のページ]
戻る   Point(4)