大鉄道旅行時代/片野晃司
よかった
死んでいく僕を車窓から眺めながら
きみが昼食のパンを食べているのを
僕は生木のように燃えながら眺めるのもよかった
断層を引き千切り褶曲の丘を切り通し
荒れ狂う川に沿ってカーブを描いた
川面は膨れ上がって幾度も列車を飲み込んでは
枯れて乾いていった
乾いた頃にまた泥水が押し寄せてきた
家がいくつも流れていった
車窓からそれが美しく眺められた
流れていく家の窓から
走っていく列車を眺めるのもよかった
乗客たちが川へ飛び込んでいった
飛び込んだ端から川は乾いていった
それから濁流が押し寄せた
干上がっていく川底の魚たちのように
泥の中に身を横たえて列車を眺める
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