冷たい血が俺を生かしている/ホロウ・シカエルボク
 
駅ほど南にある
「さかさまのヘブン」という名のバー
カウンターの中でシェイカーを揺さぶっている女は
子供のころに母親を撃ち殺したらしい
めずらしくもない話かもしれないけれど
確かに彼女の瞳の中には過去と呼べそうな光がひとつもない
俺は数年前からこの店の常連だけれど
彼女と会話らしい会話をしたことは一度もない
ポップスをレイプしてた頃の
パブリック・イメージ・リミテッドがいつも流れている


昼間がどんな天気でも
この街の夜は蒼褪めた曇り
乱暴なタクシーがホーンを鳴らすたびに
歩道で転がってる野郎どもが犬みたいに吠え返す
なあ街の外れの墓地
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