生きて在り続けること ミシェル・ウエルベック 拙訳/banjo
く、そして、すべからく苦しみこそが宇宙である。
アンリは一歳、寝転がっており、オムツは糞まみれ。アンリはうなる。母親がタイル張りの部屋でかかとを鳴らしうろうろし、ブラと服を探している。夜の約束で頭はいっぱいだ。タイルに置かれた問題、糞で覆われた些細な問題が彼女を苛つかせる。彼女は叫びそうになる。私だって!アンリはもう少し美しくうなる。そして母親が出ていく。
アンリは詩人のキャリアを歩みはじめている。
マルクは十歳、病院では父親が癌で死にかけている。やつれて機械的な種族、喉には管が通り、点滴が刺さっている。それが父親だ。ただ眼差しだけが生きており、苦しみと恐怖を語
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