going to the moon/チアーヌ
 
れるから」
 姫君は男の子に手を差し出しました。男の子はちょっと戸惑いながらも、姫君の指先を握り、そうっと引っ張ってみた。すると。にょろり、という感触がして、姫君が二人になりました。
「ほら、抜けられたわ」
 姫君はにっこりと微笑みました。
 微笑んでいる姫君は、ちょっと透けていました。そう、男の子と同じように。そして姫君の透けていない本当の体は、目を閉じて、元の通りに寝台へ横になっているのでした。
「さあ、行きましょう。あなたのお母さまを探しに」
 男の子はうなずき、二人はまるで転がるような早さで邸内を駆け抜け、背丈の何倍もある巨大な門の、ほんの少しの隙間からぐにゃりと滑り出たのでし
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