going to the moon/チアーヌ
 
こともできないのです。
 でも姫君はほんとうは、そんなことだろうと思っていた部分もあるのでした。
「ねえ、これはもうしょうがないわ。あんたは、母君が無事に浄土へ行かれたことを喜んであげなくては」
「そうですね...それはわかっているのですが、でも、ぼくは、寂しいのです」
 烏天狗はお手上げだと言うように、姫君に目で合図しました。
「困ったわねえ。どうしたら寂しくなくなるかしら」
 姫君がそう言うと、周りを囲んでいる九体の阿弥陀如来像が、不意にゆらりと動きはじめ、二人のほうへ歩み寄って来ました。
「あら」
 姫君は驚き、その様子を眺めました。そうして、大変ありがたいことなので、一心に
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