going to the moon/チアーヌ
 
姫君を見ました。
「それ、ぼくのこと?」
「そうよ」
「ぼく、成仏してないの?」
「してないから、物怪なんじゃない。迷ってるのよあなたは」
「そうなのか」
 男の子はしゅんとしてしまいました。
「落ち込むことないわ。きっと大丈夫よ」
 姫君は慰めました。そうして二人は阿弥陀堂の真ん中に座り、烏天狗を待ちました。
 静かな夜です。
 八歳の男の子と、十三歳の姫君は、まるで姉と弟のように、じゃれ合い、ふざけ合いました。
「あなたはほんとうにきれいな姫君だね。あなたが入内したら、主上もさぞかしお喜びだろうな」
「さあ、どうかしらね。主上はもう二十七歳におなりになっていて、東宮時代
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