going to the moon/チアーヌ
よ、別に。こうやって、誰かと話せれば、それだけでぼくもうれしいですから」
ふたりがのんびり歩いていると、不意に目の前に、ぬうっと烏天狗が現れました。夜、都の大路をほっつき歩いたりすれば、この世ならぬものに出会うのはよくあることとされています。
暗闇の中でさらに真っ黒な烏天狗は、修験者の格好をしているものの、顔は烏そのもの。初めて見れば、やはり驚きます。
「うわっ」
男の子は後ずさりました。
「なんだ、お前ら」
烏天狗はうさんくさいものを見るような目で二人を眺めました。
「ひとりは物怪になった人間のようだが、もうひとりはそうではないな。それにしても二人とも、ずいぶん良い身なりだ
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