going to the moon/チアーヌ
さしぶりの外の空気に、男の子は、ひさしぶりに誰かと話ができることに。
「ぼくね、物怪になって良かったことが、ひとつだけあるよ。それはこんな風に、外を歩き回れること」
「そうでしょうね。あなただって、まだ体がちゃんとあるときに、そうそうそこらへんをほっつき歩いたりできる身分じゃなかったと思うわ。その直衣だって、なかなか良いものですもの。いつの御代か知らないけど、右大臣か左大臣か.....または案外、宮様の子かもしれないわね。お姉様が梨壷の女御さまだったんだから」
「なんだかもう、そういったことは覚えていないんです。だって、あなたの話を聞いて、はじめて姉が梨壷に入られたことを思い出したんですよ」
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