going to the moon/チアーヌ
 
たよ」
「そう。いいことを聞いたわ。あんたの姉さんは、梨壷の女御さまだったのね。で、それ、いつの話?」
 男の子は姫君に訊ねられたことを、立ち止まってしばらく考えていた様子でしたけれど、結局、
「.......わからない」
と小さく答えました。
「ふうん」
 お姫様は小さくうなずき、二人は裸足のままぺたぺたと都の大路を歩いておりました。
 夜になれば、物怪どころか、盗賊も多く跋扈すると言われているので、見たところ誰もおらず、二人だけが白い玉のようにぼんやりと光ながら、行く当てもなくふらりふらりとしているのでした。
 けれど、二人は楽しさのあまり夢中になっておりました。姫君は、ひさし
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