諷狂 / ****'01/小野 一縷
擦熱は増してくる
熱に解れた 体の 生臭い ところどころは
脳髄に直結の 鼻孔奥から吸い込んで 染み込ませ
0.1μmgすら逃さずに
風に擦れ 流速を上げた体液に 循環させる
立ちはだかる風圧を 八つ裂きにして
肋骨の隙間の其々にぶつけても 揚力は発生しない
飛べないが 景色と音の衝突に湧き走る 神経繊維の むず痒さ
μmm/ms単位の その巡航速度を 両腕に
赤い罅を描いた 血眼で 読取ってゆく 黒い筋
熱 音 時間 距離を 風は正確に把握し また自覚している
風景の速度
振り向いて 見る
残留熱に巻き起こる乱気流に 幾つかの記憶が
耳穴
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