こいびと/はるな
 
。うすねずみ色で、つまらない顔の空。あなたが出て行って、そしてそこから帰ってくるまちが見えた。四角く切り取られたそれらを、でも、あまり嫌いではなかったよ。ほかの部屋から見るまちとはぜんぜん違っていた。あなたの部屋からそとを見てるのは、あたたかいものに背中を抱かれているようで、怖くなかった。
 あなたの、煙草をもつ指の角度や、わらうときの喉仏のあの動きや、わたしに触れる腕のちからを、こんなにくっきり知っているのに、あなたの顔は、どうだったのだろうか。わたしが、ほかの人とも肌を合わせるから、あなたは泣いたね。誰と何度合わさっても、ほかの人とでは、温度はすぐに流れさった。まるで最初からそこになかったみ
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