針刺して/佐々宝砂
 
した針は男の裾にこっそりと縫いつけられ、
翌朝。
糸をたぐった先に眠っていたのは
一匹の大蛇であった。

幾山越えて川越えて
林を抜けて森抜けて
夜な夜ないつくしみあえど
蛇は蛇なり人は人
されば
やがては別るるものぞ

父は鉈の一撃で蛇を殺した。

残る問題は娘の腹のうちにいた。
ちちははは悩み答を探しあぐねた。
菖蒲湯がよいというものがいた。
いや針がよいというものがいた。
一斗の油を飲ませよ、
氷の水に漬けよ、
腹を冷やせ、

父は針と菖蒲を漬けた水に娘を沈めた、
苦しがる娘を無理やり水に押しとどめた、
膨らんだ白い腹が痙攣し、
水はたちまち
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