針刺して/佐々宝砂
 
まち赤く染まったが、
それは堕胎の血であったか、
針に刺された娘自身の血であったか。

でろり赤黒くぬるぬるした紐が
幾本もいくほんも
娘の身体から吐き出された。
鉈で叩きのめして樽に入れられたそれは、
二升と五合あったと云う。

幾山越えて川越えて
林を抜けて森抜けて
夜な夜な情け深めしが
孕みし子らは因業の
因業の

父は振り返り
血に染まった盥の中の娘を見た。
息をしていなかった。



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