襤褸を着た男/はるやま
足の悪いのが大した仕事もしないと、周りにはあきれられていた。
「今日もまた、隣の女に怒られたよ」
佐吉はそう言うと、襤褸をひらりと私に見せた。米粒が付いた汚いきれが増えていた。
「米ばかり食いやがって、だからあんなに太るんだ」
どうも佐吉の来ている襤褸というのは、他者との干渉でできているようだった。
襤褸を目で追うと、なるほど私の灰色の体毛に似たきれが小さくあった。
日に日に佐吉の襤褸は増殖していく。
やがて佐吉は、身動きが取れなくなった。
私はすっかり横になり力を失った佐吉に聞いた。
「あんたはどうしてその襤褸を脱がないの?死んでしまうよ」
佐吉は目を閉じたまま言
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