襤褸を着た男/はるやま
ま言う。
「猫、これは脱げないのよ。いや、そういう選択にないものなんだ」
そう言い訳をして襤褸に沈む佐吉の背後に、私は煙った光を見た。それはある諦めから発酵した一種の恍惚のようなものだった。
佐吉は金を工面しに、死に物狂いで外へ出かけた。その帰り、重くなりすぎた襤褸は佐吉の悪い足を取り、やつを水瓶に落とした。
一晩経ち、私が見つけた佐吉は水の中でぶかぶかと浮いていた。もはや七色にもなった様々なきれが、やつを掴んで離さない。襤褸を水で全身に貼り付けて、ぐったりと死んでいる。
私は踵を返し、その場を後にした。
そして やはり水瓶には気をつけるべきなのだなあと思いながら「にゃあ」と鳴いた。
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