襤褸を着た男/はるやま
 
を放って、佐吉は眠ってしまった。

寒い日が続いた。身体はこわばり、しっぽは悴んでいる。町のはずれで、人と居る佐吉を見かけた。
「とても寒いのです、今追い出されては、凍え死んでしまいます」
佐吉はそう言うと、何者かに懇願していた。そしてそうしては、佐吉の瞳の奥に恨みのこもった、または既に死んでしまったような泥色の感情を私は見た。

その日の夜、佐吉は血と痣だらけで帰ってきた。私は汚れるのを嫌って、佐吉から離れて寝た。よく見ると、佐吉の襤褸のきれがまた増えているようだった。淀んだ血のような色だった。

金に困っていた佐吉だったが、これといった仕事はせず世の中を疎んで過ごしていた。

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