襤褸を着た男/はるやま
いたものを、私の口元に持ってきた。
「私は佐吉だ」
そう言うと、私の身体を撫でたり肉球を摘んだりして遊んだ。
佐吉と言う男は、干物のような身体をしていた。片足が悪いのか、引きずり歩く。
様々なきれを縫い合わせて作ったような襤褸を着て、日がな一日小屋で過ごしたり、外を徘徊したりしていた。
家族は居らず、一人もののようだった。
佐吉は言った。
「お前はドジだな、どうしてあんなところに居たんだ」
あんなところ、とはあの水瓶のことであろうが、そんなことを聞かれても私はとても忘れっぽかった。
返答に困り、私は「にゃあ」と鳴いた。
しばらく佐吉と暮らした。
私は朝と晩に佐吉から飯
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