創書日和「証」  ミルクティーの似合う女(ひと)/逢坂桜
 

 あの時のことがなかったら、
 この人にめぐり合えなかったと思うの。
 もちろん結婚もありえなくて。
 仕方なかったのよ、きっと。
 ほら、あたし、
 経験しなきゃわからないタチだから」

彼女は、兄に恋をして、数多いる相手の一人になり、
それでも、懸命に心をつなごうとした。
ただ、相手が悪かった。
あの男が女に本気になることは、ない。

「もう大丈夫。心配かけたけど、あたし、もう大丈夫だから」
「うん・・・おめでとう、よかったね」
「ありがとう」

兄の理想は「ミルクティーの似合う女(ひと)」だという。
聞いたとき、思わず兄をひっぱたいてしまった。
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