アルカディアユートピア/ブライアン
 
ヤホンから放たれる世界に反響する。
蚤ほどの身一点に収縮した身体から放たれる眼差し。イヤホンから放たれた母国語の歌。
衰退を目の前にして、母国語の歌に耳を澄ます。目を細める。かつて、と語りだす記憶が、アスファルトの上にも雨を降らす。
雨はアスファルトの表面を流れる。僅かな泥。土を運ぶ。僅か。
反響する街に、感傷的な雨。そして、僅かな泥、土。

街には不法な落書きがある。
夕暮れ、反射する光を断ち切る壁。
誰かの所有物、それとは別の誰かがの落書き。誰のものでもない、ここ。誰かの壁に反響する、誰でもない落書き。
見るものは、歩くものに憧れるのだ。
消されるために書かれた落書きに、
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