柔らかい命を踏んで楽しんでいると/真島正人
 
を連れた少年が上がってくる

堤防の上では
筋肉質の老人がジョギングをしている

僕は絵の中に連れて行かれたみたいだ

昔奈良県立美術館で見た
下手糞な

美大生たちの展覧会の絵



柔らかい命を
踏んで楽しんでいると

どんな美しい音律でも

調節できそうだ

できそこないだと思っていた僕の唇が
うわずって震え

唾を飛ばす

でも紡ぎだされるのは、美しい歌、

美しい旋律

歌の中に旋律があり、

旋律の中に歌がある

数年前用事があって東京のホテルに泊まったとき
僕は夜に一人で

ウィスキーをたくさん飲んでいた

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