黒い丸/リヅ
なのだそうだ
彼は続ける、兄は徐々に死んでいっているのだと
生きながら死んでいる人もいる
兄はそういう病気で、あの黒い闇は兄ではなく死の病巣なのだと
愛してはならないのだと
「あまり眺めていると、あなたの体にも黒い丸ができますよ」
私は兄に背を向けた
やぶ医者が私の望みを叶えてくれたから
背を向けた者にできるのは祈りのみである
私は一人でいる時はいつも兄の体から漏れる小さな光を思い出していた
思い出すと同時に背中から闇が追いかけてくる
振り返ってはいけないと自分で自分に言い聞かせ
兄の体から病が去るようにと祈るが
あの暗闇から走り逃げる私の目の前に一体何があったのだろ
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