黒い丸/リヅ
 
だろう
小さな光を思い出していた
あの時、振り返れば見えただろうか
固く組んだ手を開き、伸ばせば叶っただろうか

兄の死は唐突だった
光の漏れる隙間が最後の一つとなった時
まるで化膿した傷口から膿が噴き出るように
真っ黒な体からたくさんの光がふきだした
彗星みたいに尾を引いて
すべての光が空に帰ると
兄は私のよく見知った寝顔で横たわっていた

光を掴まえられなかった私は
まだ走っている
自分の背中の醜さを知らぬまま
あの光を思い出している
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