船/鈴木陽
に、一枚の板切れでもある。長細い板の形をした一片は船であって、そしてそれと名指しされるがごとに、ますま取るに足らない大きさへと断片化し、乗員は船と言う一枚の板切れの上で海面に立ち尽くすのだった。船は表現されるごとにその形を変容させる。あらゆる言葉も逃さない船という立地条件に住む我々が気づいたときには、一枚の板切れから枝が垂直に伸びていた。生成される一本の樹だろう、木片は何度も折り重なり、複雑さを増していき、ある瞬間において、木片は側面にいくつもの入れ違いに生えた垂直な梁であり、長く反り返った曲面を持つ竜骨になる。船を作る骨。垂直に向かう船の帆柱の根底はやはり海面に浸かっていて黒く湿っていて接続部分
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