船/鈴木陽
 
き、そこへ新たな斜線を引きつけようとするのは、その木片が糸によって編まれているからに他ならない。木片が海上に縦横に書きつけられることによって糸が生まれるのではなく、また同時に糸が木片を織り上げるのでもない。そのために、船は重力と浮力に対して一定の調停を量ることに成功している。

船の伸縮は船のあらゆる尺度を変容せしめており、その運動にかかわる一切の力は船の内部を駆動している木材の横滑りによって賄われていて、さらにその横滑りは船の上を走る糸の張力に依存している。ある十字の中心に強くくくりつけられた糸は別の十字に結びついている。その状態で一つの十字が船の全体を素早く運動するなら、それに結えつけられ
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