船/鈴木陽
られた、多数の十字群もまた同時に動くだろう、そうして運動する十字はまた新しく別の十字を動かすことになる。木材の輸送運動はそれ自体で永続するのだ。我々はこの木材の滑走の連鎖を止めることができない。乗員もまた一つの船に乗る錨を打たれた存在だから、我々の生活をする、一挙一足が船を動かす糧になり、そしてまた、我々は船の運動によって引かれているのである。一切の書字行為が集約される船は凄まじい監視力を我々に働かせる。隅々に張り巡らされた帆の糸は文章を伝える神経索であり、心臓であるところの書庫はある意味で船の写本となっている。その本棚は規則的にくぼみの列を走っている、複雑に枝分かれした軌条に先行されながら走って
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