船/鈴木陽
の皺によって方向づけられるが、それはあくまでも織物の十字に埋設される形で提示されて行くため、決定的に名指しされえないものだ。伏せられている。縦糸たちは船の上に覆いかぶさり、船というものを包み尽し、我々の上にもまた帳が下されるだろう、この船が縦糸を持っているからこそ、その作用は連続的になされる。竜骨に並行する複数の湾曲した木材は鉤状に配置された横糸を手繰りながら船底に繁茂する緑植物と一体化し、より深いところにこそ密度の濃い構造が留まっていて、もはや十字を超過したそれは揺られては根をのばし、強い光によって節状にまで達するのだ、細部に深く十字が染みわたることで。十字の記す中心点を結ぶ十字ではない筋書き、
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